第42回
多摩川から多摩湖まで
この2020年も師走、、、。いつもなら一年を振り返ってと言うところですが、今年はもう何が何だか、、、。もう毎日がこうも目まぐるしく変わると春にあった出来事がもう遥か昔のような気がします。先が見えないこの苦しさ。来年は良い年であることをいつも以上に願わざるを得ません。あぁ、来年オリンピックがあるとイイなぁ、、、。
パンデミックの終息が見通せない今、中々遠出ができない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は近くを再発見するということでこんな記事を書きました、、、、。
以前、多摩大橋を紹介しましたがこの多摩大橋は通りの名にもなっています。正式には都道59号線、通称多摩大橋通り。八王子市大和田町(石川入口交差点=国道20号交点)から武蔵村山市本町(かたくりの湯入口交差点=東京都道5号新宿青梅線交点)まで多摩地区を南北に通っています。この道路、多摩らしさを感じられて個人的には好きな通りであります。そこで今回はこの通りをちょっとご紹介。
まずは多摩大橋から出発。ここから北へ多摩湖を目指します。赤いアーチが特徴的な多摩大橋。青空にこの赤いアーチが良く映えます。この橋の辺りは多摩川の中流域。広い河原一面にススキが生えており何だか昔話のようにひょっこり狐が出てきて人を化かしそうな、、、そんな思いを抱いてしまうような風景が広がっています。
多摩湖へ向かう前に近くの河原へちょっと寄り道。多摩大橋の少し下流に「牛群地形」が見られます。河原と言うと丸石がゴロゴロと言ったイメージでしょうがこの「牛群地形」は川底の岩が露出したもので川の流れによって削られ、まるで牛の群れのように見えることからこの名がつけられました。よく見ると川の流れに浸食された様が良くわかります。160万年前の地層が露出したもので太古この辺りは海だったようです。多摩大橋の少し上流にあるJR八高線の鉄橋付近からはクジラの化石も発見されています。この八高線の鉄橋あたりの牛群地形は河川改修によってなくなってしまいましたが多摩大橋付近でも見られますのでぜひ足を運んではいかがでしょうか。地球の荒々しさを体験できるのではないかと思います。
さて、この多摩大橋を北へ。新奥多摩街道を越えると崖が見えてきます。この崖が武蔵野台地の末端、立川崖線、多摩川によって作られた河岸段丘であります。ここに架かる和田橋に立って多摩川方向を見るとその様子が一望できます。家々の屋根の向こうに多摩大橋のアーチが見えこの河岸段丘の大きさがより実感できます。和田橋を渡り、奥多摩街道を越えるとしばらく平たんな道が続き、思わず武蔵野台地を実感します。さらに北へと進むと市街地から郊外へと周辺の様相が変わってきます。
玉川上水に架かる天王寺橋を渡り少し行くと道はまっすぐに北へと延びて行きます。この一直線の道、2km程度はあるのでしょうか。そしてこの道の東側は広大な空き地、、、この空き地がかつての日産村山工場の跡地です。いやぁ、広々とした空間。多摩とはいえ東京都内にこのような直線道路と空間が広がるなんてちょっと他では見られない風景ではないかといつも思っています。かつてはこのような風景が多摩のどこでも見られたのでしょうか。いやぁ、それにしてもこの茫洋としたちょっと荒涼とした風景一見の価値はあるのではないでしょうか。ちなみに跡地に隣接する公園の一角にかつての村山工場で誕生した「スカイライン」を記念して碑がありますので興味のある方は立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
跡地から少し北へ行くと新青梅街道、そして青梅街道へと続きます。多摩大橋通りは青梅街道との交差点まで。でもせっかくですからもう少し足を延ばしたいと思います。青梅街道の交差点まで来ると狭山丘陵が迫ってきます。多摩湖まではもう一息。道は緩やかに登っていきます。
狭山丘陵の末端辺りに来ると何やら小さなトンネルが見えてきます。トンネルの入り口には「横田トンネル」とあります。トンネルは人二人が並んで歩くのがやっとと言った程度です。このちょっと怪しげな、、、実はこれ多摩湖建設に伴って作られた軽便鉄道の跡なのです。多摩湖や狭山湖を建設するための資材や砂利を運んだトロッコ鉄道の廃線跡なのです。ちゃんと整備されているので危険なことはないのですが中を歩くとSF映画かホラー映画の世界に迷い込んだような、、、。都内でこのようなところはめったにないので一見の価値あると思うのですが。このトンネルの少し先には日帰り入浴施設、かたくりの湯があり、その近くには狭山丘陵の谷戸を利用して作られた野山北公園があります。この公園、春にはかたくりや水芭蕉が見られます。静かな公園で丘陵や谷戸と言った地形が良くわかるのでおすすめであります。
さてかたくりの湯から道は緩やかなカーブを描きつつ登っていきます。ここから多摩湖まで雑木林の中を進みます。紅葉の季節も良いのですが春、若葉の頃も素敵です。新芽が一斉に芽吹き淡い緑色に包まれます。その時期にここを通るといつも春が来たんだと、冬が終わったんだと実感します。まっ、何の変哲もない道なのですが個人的は気に入っています。狭山丘陵の自然をぜひ感じていただきたい、、、と思うのですが、、、。
そして多摩湖へ。堰堤から見るその景色はまた良いものです。人造湖とは言え一杯に水を湛えたその景色。やっぱりなごみます。日頃の嫌なことも全部消し去ってくれるような、、、。ここから眺める日暮れの景色は本当におすすめです。そしてもう一つおすすめなのが給水塔であります。東洋一美しいとも称えられるその給水塔。まるで欧州の湖にいるような気分にさせてくれます。こちらも一見の価値ありです。
多摩大通りは特に観光地や名勝地を通るわけでもない取り立ててどうと言うこともない道ですが、それでもよく見ると意外な発見があるものです。皆さんの近くにもこんな道あるのでは、、、。ぜひ探してみてください。それでは来年は良い年であるように!