紙上ツイッター会報55号

小野 晴巳(地球冒険学校準備会顧問)

はじめに

  この原稿を書いているのは2月ですが、3月11日は間もなくです。東日本大震災に関して3月11日には間違いなくマスコミで大々的に報道されるでしょう。大災害をもたらした東日本大震災は決して忘れてはいけない日本の歴史でも未曾有の出来事です。永遠に伝えなければならない災害で終息などしていません。現在も避難生活や原発事故は進行形なのです。
  さて、この原発に関する原稿を害かせていただいていますが、本当は自分自身終わりにしようといつも考えています。しかし、原発に関するニュースが途切れもなく報道され、原発関連の新本が続々発行される現実を見るともう少し皆さんと一緒に考えてみようという勝手な思いでいます。でもあと2回位かな。
 そんな時に元総理大臣小泉純一郎がテレビ出演して原発反対の話をしました。(2月中旬頃でした。)BS放送でしたから視聴者は多くはないと思います。
  こんな内容でした。
  「原発は安くない。テロ対策は不可能。最終処分場は世界で一つだけ(フィンランドのオンカロ)。日本では何処も反対で置き場がない。原発あるところでさえイヤだと言っている。全ての原子力発電の廃止及び再生可能エネルギーの活用と技術こそ日本の未来」などと力説していました。
  さらに、自分が原発推進したのは経産省と資源エネルギー庁に喘されたからだ。といっていました。原発の利益ばかり吹き込まれて危険なことはなにも説明されず嘘を言われたと。
原発ゼロ法案.jpg  詳しくは通称『原発ゼロ法案』(正確には「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟」が発表した法案「全ての原子力発電の廃止及び自然エネルギーヘの全面転換の促進に関する基本法案」)を見てください。小泉・細川両元総理が顧問です。
  いつもの小泉節と受け止め方もいるでしょうが、私にとって納得する事が多々ありました。
  それでは本番に入りましょう。

1.原発再稼働を考える

私が一貫として原発を考えてきた基本は次の6項目です。
 (1)安全・安心かどうか
 (2)経済性を検証する
 (3)地域経済の利害関係をみる
 (4)攻・官・財・学会の利害関係
 (5)原発の諸外国事情はどうか
 (6)原発の未来は?
の6項目を頭に入れて考えてきました。

  これ等の項目どれ一つとっても私の手に負えるものではありません。複雑すぎてとても難しい項目ばかりです。賛成・反対論を今まで何回も害いてきましたが、お互い納得することはできないし、まして説得することなどもっと難しいことです。一応、正義とか絶対とか受け取られ最も信頼される事項の一つである司法判断も原発に関してはバラバラです。いままで判決として下された原発裁判にしても地方裁判所の判決や高等裁判所の判決もバラバラで原告側の勝訴と敗訴を繰り返しています。
 他にも、たとえば2月20日に経産省は「エネルギー基本計画の見直しを検討する審議会」の内容を報告しました。それも原発賛成・反対でバラバラです。
  原発推進側の大企業の経団連と中小企業の日本商工会義所は「産業の競争力強化や地球温暖化対策や事故後の電気料金の上昇が経営を圧迫している等」主張して原発の早期運転再開を訴えました。
 反対側の全国消費者団体連絡会は「制御困難で廃棄物処理のめども立っていない。原発は危険であり、将来に禍根を残し未来がない」と訴えました。
 このように、原発を巡り主張が対立しています。しかしながら停止している原発の再稼働に向けて政府・電力会社は着々と準備し進めています。さらに国策として原発を輸出し万が一巨大損失をした場合損害を補償しょうとしています。

 それでは再稼働について述べて見ましょう。
  (ア)再稼働している原発はいくつか?
  (イ)廃炉が決まった原発はいくつか?
  (ウ)再稼働を申請している原発はいくつか?
 など聞いても国民のほとんどは答えられないでしょう。原発の名称と設置場所についても同じでしょう。答えられなくとも今の日本の現状では仕方ないことです。それだけの理由があると私は考えています。このことについては後述したい。
  さて、再稼働については私の上述6項目のように各項目について詳細に検討し決定すべきです。その結果再稼働の是非を判断すればいいのです。しかしながらそれは個人ではかなり困難なことです。それで判断材料として裁判の判決・政党・マスコミ・雑誌・単行本・インターネット・地域住民の意見等で判断します。
  今回はその中の司法判断を取り上げてみます。(2018・1・18現在の脱原発弁護団全国連絡会資料を参考にしました)
  それでは一例として伊方原発の動向で考えてみましょう。
 (1)今までの係争中の脱原発裁判数は52件です。そして現在把握している訴訟30件、仮処分9件の39件を全国連絡会は裁判として把握しているそうです。
 (2)現在再稼働の原発は4機です(川内1号、2号、高浜3号、4号)。
 (3)最も記憶に新しい判決は2017年12月13目の広島高裁の伊方原発3号機の判決です。
 (4)四国電力は広島高裁の伊方原発判決に直ちに異議申し立てしました。
 (5)伊方原発の歴史
     ア)1999年愛媛県伊方町で発電開始(89万キロワット)
     イ)2017年10月に新基準に合格して初めて3号機再稼働運転開始する。
     ウ)広島高裁の仮処分決定で3号機運転停止中
  このように伊方原発については運転開始から今日まで裁判闘争が継続していました。この間激しい運動もありました。福島原発事故後は大分県民からの反対運動がありました。そのような中での再稼働についての広島高裁判決でした。現時点では全国の係争中の裁判に最も影響を与えている判決と言っていいでしょう。
  それではその広島高裁内容と反応です。

判決文  「9万年前の阿蘇山の噴火の規模を考えると伊方原発の立地条件は新基準に適合しているとは認められない」(この条件は原発の立地は地震や活断層を調査して10万年安全であるとする新基準によるものです)

原告側(弁護団など) 「画期的判決で国・電力会社は直ちに受け入れて原発ゼロを目指せ」

四国電力側  「受け入れがたい。直ちに控訴します」

政府側 「判決に関わらず、エネルギー政策は不変です」

 など声明を出しています。
 このように判決も原告勝訴・敗訴が繰り返されているのです。それは政府の見解に左右されたり、裁判官の人事権に影響される結果といわれています。

2.あとがき
 原発については難しいのですが、文中の質問の答えを書いておきます。
 (ア)再稼働の数は4…川内1・2号、高浜1・2号
 (イ)廃炉の数は9…敦賀1号、美浜1・2号、島根1号、伊方1号、玄海1号、東海原発1号、浜岡1・2号。他に大飯1・2号も廃炉予定です。福島原発はすべて廃炉(6機)なので入れていません。「もんじゅ」も廃炉です。
 (ウ)再稼働申請では新基準適合原発14機が合格しています。残りすべての原発は申請中と考えていいでしょう。(間違っていたらゴメンナサイ)
  さて、再稼働を含めて、廃炉費用とか最終処分場の選定も決まらない現状を推進派はどのように解決しようと考えているのか?
  まさか、今だけ満足していれば良い、あとはお任せですという無責任体制ではないでしょうね。
  私は原発については科学者のロマンの上に(科学者は未知への探求心の塊です。その延長上に核分裂という夢を発見しました。しかし現実は原爆とか原発への悪夢へ進んでいる)あるもので、災害とか不幸をもたらす段階では技術的に未熟な存在と考えています。実用化はいちおう早急すぎるのです。核のプラスよりマイナス面が大きいのです。人類が生み出した最大の核エネルギー発見をぜひ繁栄と幸福に活用するために、技術的解決と最大限の安全性を高めてから出発してほしいと切望します。