小野 晴巳(地球冒険学校準備会顧問)
福島原発事故から6年もたちました。国民の関心も徐々に薄れてきていますが、帰宅困難地域の人々を含めて数万人が依然として避難生活を送っています。この間に原発の再稼働は川内、伊方、高浜、大飯などの各原発で始まりました。政府・電力会社はさらに進めようと計画し、それに伴い反対運動も継続的に続いています。
そこで、私は原発の賛成反対の論点をまとめてみたいと思います。酒場談義風、井戸端会議風に我流でまとめてみましたので、気楽に読んでください。
まず自分は賛成か反対か決めてください。そして次にその理由をどの様に話すかを考えてください。
私は自分自身の話す内容と他人の話す内容を、意見を聞いて次のように5つの論点にまとめてみました。いかがでしょうか。
論点1 原発は安全・安心(施設面、放射能、核燃料サイクル等の規制、企業改善、規制等から)
論点2 原発は安い(経済成長、廃棄物、コスト面等から)
論点3 地域に役立つ(産業振興、雇用、補助金等から)
論点4 利害関係(政党・労働者、学者・マスコミ等の立場から)
論点5 諸外国関係(輸出推進、原発事故から学ぶ、諸外国の現状、将来の展望等から)
賛成反対の論争はだいたいこの5つの論点の範囲内で進行しています。私たちもおそらくこの範囲内で話しています。学者、技術者、政治家、さらに専門書もこの範囲内のようです(もちろん専門的、技術的でかつ科学用語を使いますが)。
そこで、まず賛成派の意見を聞いてみましょう。
論点1 原発は原子力規制委員会の報告書に基づいて安全・安心を保証されています。福島原発事故を教訓として、津波対策、耐震工事、電源喪失しない二重三重の対策、社員教育・訓練、マニュアル作成等により安全・安心。
論点2 原発は一番安い。地球温暖化防止に役立つ。廃棄物は地下に安全に処理され、100年間管理する。核燃料リサイクルでエネルギー問題が解決し、安定供給可能になる。
論点3 交付金、補助金などによる財政再建ん、土建業者、宿泊施設、商業などの産業振興、雇用の改善により地域活性化になる。
論点4 原子力政策の推進、電力会社の労使協調路線、御用学者たちの説明・プロパガンダ、宣伝活動による原発の必要性。
論点5
外国の原発事故は人的操作ミスや設備管理の悪さであり、日本は優秀な日本人ときめ細かい対応で事故は起きない。輸出は貿易収支に役立つ。中国、韓国、インドなどは成長戦略として原発増設を計画している。日本は原子力の開発推進により世界をリードしていく。
以上、賛成あるいは推進派の人たちは5つの論点を専門的かつ巧妙に説明し、原発を再稼働させていきます。
さて、次は反対意見です。5つの論点について聞いてみましょう。
論点1 原発の「安全・安心」はありえない。放射能ひとつとっても人類の手に余る存在。
論点2 原発は高い。コストの範囲を部分(燃料代)でみるか、全体的(建設から廃棄まで)でみるかによって経済性を判断すると高い。
論点3 地域・自治体に工場を誘致したと考えれば賛成派の意見と同じになる。しかし、原発は工場誘致と決定的に違う。大事故が起きれば災害は計り知れない。
論点4 賛成派は国家権力の力があり、反対派は力負けする。宣伝・プロパガンダで危険性等を隠す。有利・利益面だけ説明している。
論点5 ドイツ、台湾などの原発廃止決定、アメリカでの原子力会社の破綻、原子力発電の大国フランスの政策の不透明など原発の未来は明るくない。石油供給可能の増大。再生可能エネルギーの発展等で原発必要ない。
反対意見は国民の半数以上の支持を現時点で獲得していますが、今後はどうなりますか?
各電力会社は再稼働の申請をしていますが、原子力規制委員会がそれらを審査しています。今までにそれらの審査結果再稼働されていますが、私は奇妙に感じることがあります。
それは再稼働されたあと事故が起きた時の責任関係が不明なことです。したがって、責任を取る人がいないことです。その点についての質問にこのように答えています。
・規制委員会は「原発の安全審査をしただけで再稼働するかどうかは関知しない」
・知事・市長は「議会の承認に基づいて許可しました」
・電力会社は「安全審査の結果が出たので稼働しました」
ということです。私に言わせれば太平洋戦争の責任は誰も取らないと同じ構造です。
原発事故から学んだこと
・事故前から原発反対に地道に取り組んでいた人々が頑張っていたこと。
・日本人はどのような人種なのだろうか。例えば風土と性格等
・日本列島の成り立ちと地震・火山・津波の関係。
・歴史から学ぶということを日本人はできるのか(原発事故の歴史、地震等の自然災害の歴史、戦争の歴史、家庭(結婚観・女性・子ども)の歴史、障がい者の歴史等)
学んだことと書きましたが、関心がある位に受け取ってください。
最後に
原発については反対の立場ですが、賛成・反対の二項対立でなく、第三の道があるかもしれません。ぜひ探ってみたい。終わりに次の言葉で締めくくりたいと思います。
原発に哲学はあるのか?