第52回
東京小旅行
皆さんこんにちは。寒かったり、暑くなったりと、どうにも過ごしづらい時がありますが、いかがお過ごしでしょうか。今回の「なめとこ山通信」は、GWの話です。たいした発見もありませんでしたが、家族で行った東京小旅行の報告を、いくつかの写真付きで、どうぞお楽しみください。
GW直前になって、何の予定も入れていなかった私たち一家では、さすがにどこか遊びに出かけようという話題になりました。「今から宿は、ちょっと取れないねぇ。」「車で出かけて、渋滞に巻き込まれるのは嫌だな」「どうせどこへ行っても混んでるだけだよ。」・・・否定的な意見ばかりです。「誰かどこかに、連れて行ってくれないかなぁ。・・・」「! バスツアーってのはどう?」「いいね!」「いいね!」バスツアー! しかし、数日後のツアーバスの予約なんて、取れるのでしょうか。・・・取れました! しかも、王道の「はとバス」で行く、「東京半日Aツアー」なるチケットが、なぜか予約できたのでした。そんなもんか、バスツアー。とにかく、5月3日に私たちは、はとバスの出発地である東京駅に向かったのでした。
今回のツアーは、半日で東京の名所、皇居、浅草、東京タワーを一気に巡るというツアーでした。私はいずれも行ったことがありましたが、娘は浅草以外は初めての場所です。そして「はとバス」は私も初体験です。午後から出発ということだったので、午前中は東京駅のステーションギャラリーに行ってみました。連休中、そこでは建築家・隈研吾の「くまのもの」展という企画展が行われていました。今建設中の新国立競技場や新しくなるという品川駅の模型や、不思議な素材の変わった家など、興味深い展示がいくつもありました。それらは、撮影可ということでしたので、最近九州の叔父さんにデジカメを買って貰った娘は、展示物をパチパチと写しまくってご満悦のようでした。さてこのステーションギャラリーは、東京駅構内にある美術館です。東京駅は、丸の内北口がこのステーションギャラリー、丸の内南口にはステーションホテルがありました。美術館から出て、構内の天井を見上げたり、ずっと駅から離れて振り返って見たりしても、東京駅のその堂々とした姿そのものが、一級の美術品のように見えました。
午前中はそんな感じで、娘と東京駅見物でした。お昼前に妻と待ち合わせをして、三人で丸の内ビルの中にあるレストランでランチを食べました。そこは事前に見つけていた「小岩井フレミナール」という洋食屋さんです。私たち家族は、岩手の小岩井農場へ何度か遊びに行ったことがあるのですが、ここ東京駅周辺でも、小岩井こだわりの食材を堪能できるお店ということで、予約してみたのでした。すごく混んでいるわけではありませんでしたが、おかげで東京駅を見下ろせる窓側の席で、美味しいランチを楽しめました。レストランの窓からは、バスが何台も停車しているはとバスの出発地点も見えています。食べ終わったら、いよいよバスツアーの始まりです。
初めてのはとバスツアー、あっちの2階建てバスが良いな・・・と思っていたバスではなく、普通のタイプの観光バスでしたが、まぁ仕方ありません、半日のやっつけツアーですから。席はほぼ埋まっていて、よく予約できたなと思いました。前後からは、・・・沖縄の方言が聞こえてきます。まぁ、東京の人はあまりこのツアーには参加しないでしょう。バスガイドさんは、・・・緊張しているのか、まず、おしゃべりがぎこちない印象を受けました。・・・って、緊張してる? そうだったのです、後から知りましたが、4月に入社した新人バスガイドさん達は、一ヶ月の研修を経て、このGWにガイド担当デビューとなることが多いのだそうです。今回のガイドさんは、Mさん。最初の見所は皇居です。バスに乗ったかと思うとすぐ下車して、ガイドさんの案内で二重橋まで歩きます。バスを降りた私たちに、「はとバスはたくさん停まっていますのでバスのナンバーを忘れないでください」と、ナンバーの書かれたメモが渡されますが、・・・ん、そのメモ書きのナンバーが、間違えてるじゃん。Mさん、慌てておりましたが、メモを回収することもなく、そして乗客の方も、まぁ間違えることもないだろうという感じで渡されたメモをなかったことのようにしていました。Mさん、ドンマイ。
二重橋前では、記念撮影がありました。え、聞いてないな。これは料金に入っているの? 違いました。希望者の分だけプリントされ、後で販売されるのだそうです。まったく知らない人達と一緒に記念撮影したものを、欲しい人がいるのかな。とも思うのですが、まぁいくらかは注文もあるようでした。不思議です。ところで、この年になって初めて知りましたが、二重橋という橋は、正式には手前にある二重アーチ構造の石橋のことではなく、その奧にある鉄橋のことなのだそうです。手前が「正門石橋」、奧の橋は「正門鉄橋」が正式名称で、正門鉄橋は、かつて木造橋だった時代に、上下二段の二重構造であったことから二重橋とも呼ばれ、鉄橋に架け替えられてからもその橋が二重橋と呼ばれているのだそうです。ただ一般には、この手前に見える石橋と、奧に架かる鉄橋とが二重に見えるから二つの橋を総称して「二重橋」と言ったりもするのです。しかしくどいようですが、奧の橋が本当の二重橋なのです。まさに、二重の意味での二重橋のトリビアなのでした。
我々ツアーは、二重橋を見学し終えると、外苑を戻って、楠木正成の銅像にやって来ました。東京の3大銅像の一つだそうです。(他は、上野の西郷さんと、靖国神社にある大村益次郎像だそうです。)ガイドのMさんが銅像の正面だと言う側に皆で集まりましたが、どう見ても銅像は後ろを向いています。後で調べてみましたが、楠木公が皇居に背を向けてはいけないということで、二重橋を正面に見据えるように造られているのだそうです。その辺のところを説明して欲しかったな。Mさんは、銅像の総重量を、初めは「600t」と説明していましたが、後から訂正して「600kgでした」と言うのです。全然違うでしょ。・・・けど、象一頭よりもこの銅像は軽いのか? これも後で調べましたが、本体部の重さは、約6.7tだそうです。大丈夫か、Mさん。
さて、ツアーの次なる見学地は、浅草です。浅草寺で、1時間くらいの自由時間になりました。連休真っ只中の浅草寺は、やはり大変な賑わいでした。はとバスツアーのささやかなおまけの、雷おこしをお店へもらいに行ったり、人形焼きを食べたり、妻はどこからかメロンパンを買ってきたので、それも三人で食べました。浅草の新名物はメロンパンだということで、二つの店が味を競っているようです。それから、娘は正月にも浅草寺に来ておみくじを引いていたのですが、この日もまたおみくじを引きたいと言って、引いていました。出てきたのは、凶でした。毎回、凶です。実は、浅草寺のおみくじは、凶が多いということで有名です。またまた後から調べた情報によれば、浅草寺のおみくじの吉凶の各本数は、100本のうち「大吉17本、吉35本、半吉5本、小吉4本、末小吉3本、末吉6本、凶30本」なのだそうです。凶は3割。けれどこれが昔からの配分で、浅草寺ではそれを守っているということなのでした。ちなみに私も正月におみくじを引いて、吉でした。って、一番普通じゃん。むしろ、凶を引いた方が、これから運は上がるだけ、と解釈して、しっかり前を向いて行け、娘よ! ・・・と思ったのでした。
さて、半日東京バスツアーもいよいよ終盤、残る見学地は東京タワーです。スカイツリーの方に人気をとられても、東京のシンボルは東京タワーだ、と言う人はきっといるでしょう。娘は、初・東京タワーです。やはりここも、連休中ということで混み混みでした。入口手前にはたくさんの鯉のぼりが泳いでいました。我々ツアー一行は、チケットを受け取り、エレベーターでメインデッキ(地上150mの展望台)に登ります。この後はまた、自由行動です。お約束でガラス張りの床から下界を見下ろしてみたり、持ってきた双眼鏡で東京の街を眺めてみたり、・・・しかしすることは大抵それくらいで、下のお土産屋さんを冷やかした方が良さそうだ、とエレベーターで下りようとしていたところ、階下のフットタウンに通じる階段入口を発見したのです。階段で下りられるんだ。じゃぁ、行ってみようか! というわけで、私たち家族3人は、600段の階段を下りはじめました。そこは途中から、外階段的な感じになり、けっこう風もうけてちょっぴりスリルがあったりします。娘は、このツアーで、この階段を下りたのが一番楽しかったと言っていました。下りでしたから、600段もわりと苦にならずに下りて来られました。着いたフットタウンには、今はもう蝋人形館はなくなっていました。あとは、バスに乗って東京駅へ帰るだけでした。帰りのバス車内で、Mさんが一言、「スカイツリーいかがでしたか!」と、最後にやらかしてくれましたが、みんな疲れていたのか、突っこむ乗客もいませんでした。
初めてのはとバスツアー、なんだかんだありましたが、なかなか楽しい体験でした。それにしても、はとバスが、この連休に、まるで素人な新人ガイドをぶち込んでくるとは思ってもみませんでした。おかげで、帰宅後の家族の会話が盛り上がったことは、それも込みでバスツアーに組まれた楽しみだったのかもしれません。次回は、一日バスツアーで、もっと愉快な人と出会いたいなぁと、思ったりしたのでした。おしまい。